2011-2015

2011年度 現代中東研究会

第1回 2011年8月11日(木)19:30~21:00
太 勇次郎(NHKカイロ支局長)
「パキスタン・アフガニスタンの取材体験記」
2011_gen_1st<要旨>アメリカのテロとの戦いの相手が「テロリスト」か、それとも「イスラム戦士」か、これは立場によって考え方が違う。 テロとの戦いの主戦場となっているパキスタンとアフガニスタンでは、アメリカが「敵」と考える相手を、「イスラム戦士」と呼ぶ。 特に、パキスタンでは、殺害されたビンラディン容疑者のほかにも、多くのアルカイダ幹部が潜んでいる。大勢の「イスラム戦士」たちとその支持者を抱えるパキスタンが、テロとの戦いの中で、どのように国益を守るかで悶絶を続けている。同時多発テロ事件以降の取材体験を中心に講演する。
第2回 2011年12月15日(木)18:30~20:00
杵渕 正巳(在エジプト日本国大使館 公使)
「最近のエジプト情勢と日エジプト関係」
2011_gen_2nd<要旨>本年1月に始まったエジプト革命は、いまだ進行中にある。ムバラク大統領の退陣は果たされたが、それまでの体制に替わる新たな 安定的な政治的枠組みは出来ていない。軍、宗教勢力、セキュラー勢力、革命勢力、旧体制派等々のグループが様々な思惑を持って動き、それが歴史を作り上げているという状況にある。本研究会では、事態が流動化する中での情勢認識等について、参加者と積極的に意見交換したいと思う。
第3回 2012年2月16日(木)18:30~20:00
鈴木登(鈴古堂店主)
「ザマーレク横丁商店街の光と影-『朝日中東マガジン』の連載から-」
2011_gen_3rd<要旨>ザマーレクは、富裕層や文化人の街という印象があるが、私が住んでいる横丁商店街は、職人、運転手、女中など島に住んでいない庶民が客として、あるいは働く場所として集まる場であり、読み書きができない人も多くいる。そういう人たちの表情に、このたびの「革命」は影をなげかける。あるときは行き先を失って混迷に入り込むが、また政治に対する不満をはっきり言えるようになった明るい兆しもみられる。そこで本発表では、私が『朝日中東マガジン』に寄稿してきたいくつかの題材をもとにしながら、皆さんが体験した「革命」と比較して話し合いたいと思う。

2012年度 現代中東研究会

第1回 2012年7月12日(木)18:30~20:00
飯山陽(フジテレビカイロ支局員/上智大学アジア文化研究所客員所員)
「「牛の腹」に住む人々-スラム住民の生活にみるエジプト最貧困層の実態-」
2012_gen_1st<要旨>カイロにも多く存在するスラムには、国際貧困ラインを大きく下回る極めて貧しい人々が劣悪な環境下で生活している。昨年貧困率が27%から30%へと上昇したことにみられるよう、エジプトの貧困問題は革命以後更に悪化した。スラム住民は1200万人を超すとされるにも関わらず、その生活の実態は一般のエジプト人にすらよく知られていない。取材を通じて知り合ったある一家の映像と、彼らが明かした本音を通じ、貧困という側面からエジプトの今を分析したい。
第2回 2012年12月20日(木)18:30~20:00
大内清(産經新聞中東支局長)
「同胞団ウォッチの面白さ」
2012_gen_2nd<要旨>エジプトで、同国のイスラム国家化を志向するムスリム同胞団を母体とするモルシー政権が誕生して約半年。かつては当局の厳しい監視下にあった同胞団は、エジプト内政のみならず、域内外交においても最も重要なプレーヤーの一つとなった。
秘密結社的性格を保つ同胞団の意思決定過程は外部の者にはきわめて分かりにくく、それゆえに「熱心に慈善活動を展開する大衆組織」といったイメージだけが先行しがちだ。ただ、現実の同胞団はさまざまな路線対立を抱えており、権力闘争も繰り返されてきた。そして現在のエジプトでは、同胞団指導部の性格がモルシー政権の政策を大きく左右する力を持つだけに、同胞団の内部事情をより正確に理解することの重要性はかつてなく高まっている。
同胞団の歴史を振り返りつつ、多数の関係者に取材した経験などから、同胞団を観察する面白さをお伝えできればと思う。
第3回 2013年3月28日(木)18:30~20:00
高橋正和(国際交流基金カイロ日本文化センター所長)
「中央アジアのイスラム国「ウズベキスタン」-知られざる親日国の素顔とその葛藤-」
2012_gen_3rd<要旨>中、露、印などの大国に囲まれ、地政学的要衝地である中央アジア。中でも域内最大の人口を誇り、アフガニスタンへの出口を有するウズベキスタンはその中心国といえる。古くから様々な民族が激しい興亡を繰り返した歴史ドラマ溢れる地域であり、シルクロードの「青の都」サマルカンドがある大変な親日国でもある。一方、1991年の独立以降、「イスラム国家」として独裁と緩やかな民主化が混在する側面を有する。独裁から民主化への変革期にあるエジプトの現状を念頭に、私が体験したウズベキスタンという国の魅力と課題についてお話したい。

2013年度 現代中東研究会

第1回 2013年4月24日(水)18:30~20:00
池滝和秀(時事通信社カイロ特派員)
「イスラム過激派の潮流と展望-パレスチナ自爆未遂犯やシリア内戦から探る-」
2013_gen_1st<要旨>旧ソ連軍をアフガニスタンから駆逐したムジャヒディン(イスラム戦士)の台頭を機に国際テロ組織アルカイダが生まれ、1990年代~2000年代にかけて国際的なテロが相次いだ。民衆運動「アラブの春」で独裁政権が相次ぎ崩壊し、アルカイダの聖戦思想は退潮傾向にあるともいわれる。いずれも日本人10人が死亡した1997年のルクソール外国人観光客襲撃や今年1月のアルジェリア天然ガス施設襲撃など私たちもテロとは無縁でいられない。パレスチナ自爆未遂犯との獄中インタビューや義勇兵が多数流入するシリア内戦の現地取材を踏まえ、イスラム過激派の潮流と動向を探りたい。
第2回 2013年7月18日(木)19:00~20:30
片岡麻美(在エジプト日本大使館専門調査員)
「「1.25革命」後の女性支援活動の変遷―時代に翻弄されるエジプトのジェンダー問題―」
2013_gen_2nd<要旨>焼け焦げた旧国民党ビルを見れば、誰もが目にするであろう「国家女性評議会」。これは何を象徴するのか。「1.25革命」は、エジプトの女性団体の活動や女性支援の在り方においても、大きな転機をもたらした。「革命」後、従来の女性団体が苦悩する一方、イスラームに基づく慈善活動の一環としての女性支援は淡々と行われている。その裏で、「革命」をきっかけとした新たな動きも見られるようになった。本発表では、エジプトの女性支援の変遷をたどるとともに、今後の女性支援の在り方について考えてみたい。
第3回 2013年11月21日(木)18:30~20:00
宇治弘晃(エジプト味の素食品社長)
「エジプトでの味の素の販売活動」
2013_gen_3rd<要旨>「気が遠くなるような活動ですね」と言われる。誰も知らない商品をスークの一軒一軒に売り歩く。味の素が100年前からやってきたドブ板営業だ。利益が出るまでには早くて10年。それまでひたすら質実剛健の経営に徹し商品の普及に努めている。エジプト人は食に保守的だといわれるが、そんなことはないと思う。初めて出た国としてはまずまず順調な滑り出しといえる。そんな日々の活動を紹介します。
第4回 2014年2月20日(木)18:30~20:00
山本英昭(在エジプト大使館広報文化センター所長/前職:対パレスチナ自治政府・日本政府副代表)
「パレスチナ問題:「アラブの春」の風を受けて」
2013_gen_4th<要旨>パレスチナ問題は、アラブ・イスラエル紛争の核心的な問題と位置付けられ、この紛争は日本を含めて世界的な影響を及ぼしてきた。エジプトも、この問題に関して主要なプレイヤーであり続けた。問題解決へ向けた現時点の取組においては、パレスチナ国家樹立とイスラエル・パレスチナ双方の平和的共存(二国家解決)が最終目的である。本発表では、パレスチナ問題の経緯を振り返り、その本質に迫りつつ、「アラブの春」のパレスチナ問題への影響、昨年9 月に再開された和平交渉の現状について考察し、その行方について展望する。また、日本の立場・取組についても取り上げる。

2014年度 現代中東研究会

第1回 2014年8月28日(木) 18:30~20:00
長谷川健司(共同通信カイロ支局長、元テヘラン、エルサレム支局長)
「イラン―異端の中東大国―」
2014_gen_1st<要旨>反米、非アラブ、イスラム教シーア派…。エジプト、トルコと並ぶ中東の大国ながら、スンニ派世界からなじみが薄く、敵視されがちなイランを、ジャーナリストとして内と外から見た体験から紹介する。体制すべてをひっくり返した1979年のイラン革命と2011年のエジプト「革命」の比較、核保有をめぐるイスラエルとの「第4次中東戦争」のシナリオ、戦火が拡大するシリア・イラク情勢と背景にあるシーア・スンニ両派の対立などを取り上げる。
第2回 2014年9月25日(木) 18:30~20:00
小林基秀(北海道新聞カイロ支局長)
「アフリカの自衛隊を追い掛けて」
2014_gen_2nd<要旨>現在、アフリカ大陸では南スーダンとジブチの2カ国で自衛隊が活動している。かつてはルワンダやモザンビークにも派遣された。アフリカへの自衛隊派遣はもはや日常。その主力が北海道の部隊だ。冷戦終結で、相対的に北の国境防衛の重要度が下がったこともあり、海外派遣の〝先兵〟の役割を担っている。発表者は、南スーダンに2回、ジブチに2回、ゴラン高原1回、それぞれ自衛隊の取材に訪れた。自衛隊は海外でどのような活動をしているのか? 隊員の暮らしぶりは? 自衛隊海外派遣の意義や、集団的自衛権との関係も考える。
第3回 2014年10月16日(木) 18:30~20:00
高宮純一(JETROカイロ事務所所長)
「エジプト駐在の4年半を回想する」
2014_gen_3rd<要旨>小職は、ジェトロ駐在員として、2010年3月24日付けエジプトに着任した。早くも4年半が過ぎ去り、この間、激動期のエジプトを実体験することができた。2度にわたる妻子の国外退避も経験した。ジェトロ職員として、今回の駐在期間の業務を通じ、その時々に様々なレポートを執筆・作成した。こうした小職のレポートを通して、4年半のエジプトの変遷を回想すると共に、その当時、自分自身が何を思い、考えていたか、自省も含め回顧することを試みたい。
第4回 2014年12月18日(木) 18:30~20:00
松永秀樹(JICA エジプト・イエメン事務所長)
「エジプトにおける公的セクターの計画実施能力の課題」
2014_gen_4th<要旨>JICA エジプト事務所では昨年より、ブルッキングス研究所およびロックフェラー・ブラザー財団とエジプトの公的セクターの問題、特に計画実施能力上の課題に関する共同研 究を行ってきた。ムバラク政権下で顕著になったのは、戦略、計画は多数策定されるものの、それらの実施がなされないという傾向である。その結果、GDP に占める投資の割 合は30 年間低下、経済成長にも大きな負の影響があった。今回のセミナーでは、共同研究によって明らかとなったエジプト公的セクターの課題および新政権に対する提言 を紹介してみたい。

2015年度 現代中東研究会

第1回 2015年7月30日(木) 18:30~20:00
エルサムニー ソフィー(在エジプト日本国大使館専門調査員)
「地域研究と映画:映画を通して歴史・社会・文化を見つめる」
2015_gen_1st<要旨>地域社会の有り様をその土地に根ざして理解し,それぞれの「地域のかたち」を他の人々にわかるように伝えようとする地域研究にとって,映画は極めて有効な情報源の一つであり,またその土地の人々が「いかにして自己を見つめ,自己を表現しているのか」を読み解くための重要なカギでもある。今回のセッションでは,映画を通しエジプト社会を見つめることの醍醐味について考え,エジプト映画界の巨匠達が,歴史的ターニングポイントを経た後,いかにしてスクリーン上で自己を表現し,自己分析を行ったかについて触れるとともに,2011年以降のアラブ映画への期待や,映画の読み方について皆様とともに考えてみたい。
第1回 2015年12月3日(木)  18:30~20:00
久保山敬太(国連高等弁務官事務所(UNHCR)エジプト事務所シリア難民向け資金支援プログラム 主任担当官)
「エジプトでのシリア難民支援1年半を振り返る:UNHCR資金支援プログラムを通して見る難民支援 -シリア難民のケースから」
2015_gen_2nd<要旨>UNHCRエジプト事務所での難民支援1年半を振り返る。エジプトには、シリア難民、アフリカ系・イラク難民など、推定20~25万人の都市難民がエジプト全土にいると推定されている。その中で、1年半の総括も兼ねて、担当業務であるシリア難民向け資金支援プログラムを紹介・考察したい。その他、UNHCRエジプト事務所の難民支援と保護についてもご紹介したい。
第3回 2016年2月4日(木) 18:00~20:00
後藤絵美(東京大学・東洋文化研究所)
「映画にうつる社会~エジプト映画『678』を中心に」
2015_gen_3rd<要旨>近年、エジプトでは、社会問題に深く切り込んだ映画が次々と制作されている。本会では、「678」(ムハンマド・ディヤーブ監督、2010)を中心に、そうした作品を紹介する。
タイトルの「678」とは、カイロ市内の公営バスの番号である。この路線バスを使って通勤する公務員のファイザは、車内での痴漢行為に悩まされてきた。工芸作家のセバは、夫と訪れたサッカー場で男たちに囲まれ、性的暴行を受ける。コールセンターで働くネッリーは、受話器から聞こえる言葉の嫌がらせにうんざりしてた。ある日、路上で痴漢被害に遭い、彼女の怒りは頂点に達する。
2011年革命に向かうエジプトを舞台に、人びとの日常の葛藤を描いた本作品を通して、現代社会について考えてみたい。
(なお、「678」の上映許可を取得中です。取得できました際には全編上映いたします。(日本語字幕))