2011-2015

2011年度 定例懇話会

第1回 2011年5月12日(木)18:30~20:00
竹村和朗 (東京大学大学院博士課程)
「船頭二人で船沈む?! エジプト・アーンミーヤの諺」
2011_konwa_1st<要旨>日本の諺の「船頭多くして舟山に登る」がエジプトにもある、と耳にしたことはないだろうか。エジプトの諺を教えてもらったが、よく意味がのみこめなかったという経験はないだろうか。我々日本語話者にとって、アーンミーヤ(口語アラビア語)の諺は、時にわかりやすく、時にわかりづらい。本発表では、これらを「通文化の諺」「異文化の諺」と分類し、異なる社会の諺を身近にする考え方を提示する。また特徴的な諺を適宜紹介する。
第2回 2011年6月23日(木) 18:30~20:00
長谷川奏(日本学術振興会カイロ研究連絡センター長)
「新しいデルタ考古学の始まり―水辺環境をめぐるヘレニズム文明の知を求めて―」
2011_konwa_2nd<要旨>ファラオ文明からヘレニズム文明への移行期を主題とする。外来政権として登場したヘレニズム勢力は、分厚い前身伝統とどう対峙したのであろうか。その問いを解く鍵としてのフィールドを、アレクサンドリアの周域に求める。当該地域は、近代以降の開発によって、大きく環境が変わってしまったが、ヘレニズム時代には、海洋~湖~運河~ナイル支流に支えられた豊かな水運ネットワークが作り出されていた。本発表では、考古学と先端科学融合させながら、西方デルタの歴史環境を考える取り組みを紹介する。
第3回 2011年9月29日(木) 18:30~20:00
後藤絵美(日本学術振興会特別研究員PD)
「自発的なヴェール着用をどう読むか-芸能人女性の「語り」からの一考察-」
2011_konwa_3rd<要旨>1970年代以来、世界各地でヴェールを着用するムスリム女性の数が増加してきた。政治的権力や家父長的慣習によるヴェール着用の強制が非難を浴びる一方で、人々の関心を引いたのは、高学歴な女性や社会進出を果たした女性による「自発的なヴェール着用」であった。彼女たちは今、なぜヴェール着用を選択するのか。本報告では、エジプトで「悔悛した芸能人女性たち」と呼ばれる人々の言葉を一つのきっかけとして、上記の問いについて考えていく。
第4回 2011年11月17日(木) 18:30~20:00
木村伸子(早稲田大学文学研究科後期博士課程)
「ヴァイオリンで聴くアラブの音」
2011_konwa_4th<要旨>カイロの街中で耳にするアラブ音楽。日本人である私たちにとっては聴きなれない、不協和音にも聴こえるその音は、実は私たちが慣れ親しんできた西洋音楽以上に古い歴史を持ち、かつ科学的にも非常に美しい理論を持った音だということが明らかになってきた。私たちにとって比較的馴染み深い楽器であるヴァイオリンの構造にも、アラブの音の起源の痕跡が残されている。ヴァイオリンによるアラブ音楽演奏の実演を交えながら、その音の起源の一端に触れる。
第5回 2012年1月19日(木) 18:30~20:00
松田俊道(中央大学文学部教授)
「新カイロ物語―ノスタルジアとカイロ旅物語:『スルターンのトゥグラの書』から―」
2011_konwa_5th<要旨>革命直後に、小説『スルターンのトゥグラの書』が出版された。これは一つのイスラーム文明論であり、イスラーム時代以後のエジプト史のある理解でもある。イブン・イヤースやジャバルティーの著作が現代の問題に結びつけられている。また、作者が3つに分かれた地図に従ってカイロを旅する9つの旅行記を年代記風に記したものでもある。最後にそれぞれの地図を重ね合わせると、このカイロの地図はオスマン朝スルターンのトゥグラ(花押)の形にぴったりと符合する。本書をもとにイスラーム文明を考えてみたい。
第6回 2012年3月14日(水) 18:30~20:00
イサム・ハムザ(カイロ大学文学部教授)
「「アラブの春」を起点とするエジプトと日本の国際交流の未来」
2011_konwa_6th<要旨>このたびの「アラブの春」といわれるアラブ世界においてさまざまな変化を求める国民が巻き起こしている状況の中、日本とエジプトの交流関係はどのように進むのか。エジプトの国民は2011年1月25日の革命を政治的体制ばかりでなく、文化や教育の分野でも、古い殻を打ち破って、新しい形を創っていく新たなきっかけにするはずである。そこで、国際交流の未来には、双方の国の人々に何が求められるのかをこの発表を通して考えてみたい。

2012年度 定例懇話会

第1回 2012年5月31日(木) 18:30~20:00
鷲見朗子(京都ノートルダム女子大学教授)
「『百一夜物語』―シャハラザードを超えて―」
2012_konwa_1st<要旨>『百一夜物語』とは、『千一夜物語』(別名『アラビアンナイト』)の流れをくむアラビア語の説話集で、マグリブとアンダルスで流布し編まれたとされている。『千一夜物語』では千一夜かけて物語が語られ、『百一夜物語』では百一夜かけて語られる。この二つの物語集に共通するのは、数話の物語と、枠物語(導入的な枠となる物語)、そして語り手シャハラザードである。本発表では『百一夜物語』の枠物語に焦点をあてて、その語りが『千一夜物語』の枠物語とどのように異なるかを明らかにしてみたい。
第2回 2012年6月21日(木) 18:30~20:00
平寛多朗(東京外国語大学大学院博士課程)
「エジプトにおける国語と文学教育―「エジプト人」の作られ方―」
2012_konwa_2nd<要旨>なぜ国語の時間の中で、文学作品を読まなくてはいけないのか?一般的に、文学教育は道徳教育として機能してきた。さて、この道徳とは何であろうか?戦中の日本では皇国史観が国語における道徳であった。エジプトでは、1990年代以降の初等教育の国語では、文学教育を通して民主主義が学ばれる一方、集会の自由、自由な選挙の権利という概念が教科書の中から取り除かれていたと指摘されている。道徳は「国家」が望む「国民」を作る側面を持っていると言える。本発表では、高校普通教育の文学教育に焦点を当て、いかにエジプト人意識が形成されるのか迫ってみたい。
第3回 2012年10月18日(木) 18:30~20:00
伏屋智美(遺跡保存コンサルタント)
「考古遺跡から社会へ―文化遺産の保存への新たな取り組み―」
2012_konwa_3rd<要旨>紀元前3000年頃に成立した古代エジプトの遺跡は、古代ギリシアの歴史家をはじめ、18・19世紀の蒐集家、現代の観光客や研究者を魅了し続けている。人類の歴史や観光資源として重要な遺跡ではあるが、その「保存」が重要視されるようになったのは最近のことである。現在、保存修復や遺跡管理の活動が多くの遺跡で実施されている。一方で、遺跡自体を重要視するあまり、遺跡を擁するエジプトの現代社会から切り離されて遺跡保存が実施されることがしばしば起きている。そこで、その影響と遺跡と「文化遺産」を、社会やひととの関係から考えてみたい。
第4回 2012年11月15日(木) 18:30~20:00
野田有紀子(アインシャムス大学外国語学部日本語学科客員講師)
「エジプト人学生からみた日本―比較研究の視点から―」
2012_konwa_4th<要旨>エジプト国立アインシャムス大学外国語学部(Al-Alsun)日本語学科では、4年次に日本語もしくは日本文化に関する卒業論文を日本語で執筆することが必修となっている。彼らエジプトで日本語を学ぶ学生は、日本のどのようなテーマや問題に関心を抱き、どのような結論を導いたのか。今回の発表では本学科における卒論への取り組みや、去年度の卒論テーマと傾向を紹介。さらに私の専門分野である日本古代史(日唐比較研究)を背景としながら、日本とエジプトとの比較研究のあり方を探りたい。
第5回 2013年1月17日(木) 18:30~20:00
黒河内宏昌(NPO法人太陽の船復原研究所教授・クフ王第2の船発掘現場主任)
「世界の船の遺物とクフ王の船」
2012_konwa_5th<要旨>ギザ・クフ王ピラミッドに副葬された2隻のクフ王の船は、世界最古の船の遺物として注目されている。うち1隻はすでに復原を終え、ギザの船博物館に展示されているが、もう1隻は現在発掘に向けて準備中である。2隻目の船は保存状態があまり芳しくはないが、復原を終えたのちにはどのように展示するのが望ましいのであろうか。世界のさまざまな船の博物館を訪ねながら、クフ王の船の魅力と、その展示方法について迫ってみたい。
第6回 2013年2月28日(木) 18:30~20:00
熊倉和歌子(日本学術振興会特別研究員PD)
「中世エジプトのナイル灌漑―灌漑土手はどこへいったのか?―」
2012_konwa_6th<要旨>降雨量がほとんどなく、天水農業ができないエジプトでは、古代から灌漑をナイルの水に全面的に依拠し、土手を利用した独特の灌漑方法が維持されてきた。しかし、近代に通年灌漑がはじまって以降、長きにわたって続いた灌漑方法は打ちすてられ、その記憶は薄らいでいる。古代から近代まで続いた灌漑方法とはどのようなものだったのか、それにおいて利用された土手はいったいどこに設置されていたのか? 中世イスラーム期に残された文書記録から忘れられた灌漑方法の復元を試みる。
ジュニア研究発表会2013年3月14日(木) 18:30~20:00
長谷川怜(学習院大学大学院博士後期課程)
「近代史研究における古写真・絵葉書の活用-学習院大学史料館の取り組みを中心に-」
2012_jr<要旨>歴史研究において第一に参照されるべきは、書簡や文書、日記など一次史料であり、また新聞や雑誌など、メディアも史料として重要な位置を占める。だが、文字として記録されることのなかった人々の生活や文化、街並み・都市空間などを知るためには、写真や絵葉書など画像資料が有効な手がかりとなる。本報告では、①近代史研究における画像資料を用いた研究の概要を紹介する。その上で、②画像資料の利用が歴史研究にいかなる成果をもたらすのかを様々な画像を用いながら提示し、③今後の研究の可能性について展望を示す。報告は、大正時代100年を記念して2012年に学習院大学史料館が行った展示・出版活動を中心とする。また、それらの成果を延長させて、エジプトの古写真・絵葉書についても分析を加えてみたい。

2013年度 定例懇話会

第1回 2013年6月6日(木) 18:30~20:00
福永浩一(上智大学大学院博士課程、ヘルワン大学文学部歴史学科)
「初期ムスリム同胞団の思想と活動―創設者ハサン・バンナーの著作を通じて―」
2013_konwa_1st<要旨>現在エジプトはムスリム同胞団系のムルシーが政権の座につきおよそ1年となる。同胞団はナセル政権下で弾圧されてより非合法化されていたことで知られるが、この組織は1928年にハサン・バンナーと6名の同志により結成されたのを起源とする長い歴史を持ち、当時イスラーム復興の先駆的な運動であった。本報告は非合法化以前の同胞団に注目し、初代指導者バンナーの回想録や論考その他を参照しつつ、彼が多数の民衆を動員する包括的な組織の形成を着想するに至る経緯と、その後いかに同胞団の理念を発展させたかについて考察を試みる。
第2回 2013年12月19日(木) 18:30~20:00
Dr. Hourig Sourouzian
(Director of ‘The Colossi of Memnon and Amenhotep III Temple Conservation Project’)
“Recent work at the ‘Temple of Millions of Years’ of king Amenhotep III”
2013_konwa_2nd<要旨> The ‘Temple of Millions of Years’ of king Amenhotep III on the west bank of the Nile in Luxor was the largest of all funerary temples in Egypt . ≪ The Colossi of Memnon and Amenhotep III Temple Conservation Project ≫ has been active on the site since 1998, with the aim to save the last remains of this once prestigious temple, which had collapsed during a heavy earthquake in antiquity. This extremely damaged and abandoned site, was actually threatened by neglect and encroachments, and its monuments were endangered by irrigation water, salt, vegetation, fires and vandalism. The efforts to save this site have been successfully carried out thank to the generosity of private donors and the know how of qualified specialists, with defoliation, desalination, full documentation and conservation of the visible remains. Simultaneously new discoveries have brought to light royal colossal statues of extremely high artistic quality, found broken into thousands of fragments and scattered all over the site, along with a monumental stela and remnants of architecture. The story of the discovery of these monuments, the process of reassembling their dispersed parts, and their final presentation at their original place in the temple, will be the subject of this presentation.
<趣旨>このたびの定例懇話会では、国際的にも著名なエジプト学研究者にご登壇頂き、ルクソール西岸地域で進める新王国時代の調査研究のお話を伺います。発表には日本語通訳はありませんが、多くのスライドを用い、分かり易くご講演頂けると思います。また講義に先立って、お話の大筋を、日本語で簡略に解説させて頂きます。皆様方の参加を心よりお待ち申し上げます。
第3回 2014年1月30日(木) 18:30~20:00
澤井真(東北大学大学院博士課程)
「イスラームにおける神の名前―タンヌーラからイスラーム哲学まで」
2013_konwa_3rdイスラームには、「神は99の名前をもつ」というハディース(預言者ムハンマドの言行録)がある。神の名前は、カイロの街角やムスリムの日常生活の到る所に登場する。イスラーム思想もまた、神の名前を通して展開されてきたが、それは神の名前を知ることは人間を知ることと直結するからである。本発表では、エジプト観光の一つであるタンヌーラ(スーフィーの旋舞ショー)や預言者生誕祭など、聴衆にも馴染みのある事例を糸口としながら、イスラーム哲学の神名論へと考察を進めていくことにしたい。
第4回 2014年3月20日(木) 18:30~20:00
特別企画「トルコ~エジプト~日本をつなぐ近代社会のネットワーク」
18:20~19:00 発表①
「日本出身タタール移民のライフヒストリー ―トルコ・アメリカへの移住を中心に-」
沼田彩誉子(ボアジチ大学アジア学研究所客員研究員)

1917年のロシア革命後、ヴォルガ川中流域に住むタタール人は満州、朝鮮半島、日本へと避難した。1920~50年代を極東で過ごした彼らタタール移民は、戦中日本のイスラーム政策の対象とされた。このことから、イスラーム政策とタタール移民の指導者の活動が研究課題とされてきた。これに対し、戦後、極東を離れたタタール移民に関して彼らの「その後」が取り上げられることは少なかった。本発表では聞き取り調査に基づき、日本の敗戦による政策終結以降に焦点をあて、日本からトルコ・アメリカへと移住した人々のライフヒストリーを明らかにする。
19:00~19:10 質疑応答
19:10~19:50 発表②
「スフィンクスと奈良の大仏-明治日本の建築家、伊東忠太の埃及(エジプト)旅行-」
青木美由紀(イスタンブル工科大学准教授補)

東京築地本願寺の建築家として知られる伊東忠太(1867-1854)。「建築」の訳語を日本語に定着させ、日本初の建築史家でもあった忠太は、1902年、法隆寺の建築が、ギリシアにつながるという持論を証明するため、世界一周の旅に出た。三年三ヶ月の世界旅行中、約1ヶ月半滞在したエジプトで、暑さに溶ける写真現像液もなんのその、忠太はスフィンクスと奈良の大仏の大きさ比べをする。本講演では、 伊東忠太の抱腹絶倒のエジプト旅行のエピソードを追いながら、 明治知識人としての忠太の「エジプト観」を焙り出し、エジプトが、日本の「東洋建築」という大きな枠組みにどう位置づけられたかを紹介する。
19:50~20:00 質疑応答
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2014年度 定例懇話会

第1回 2014年5月29日(木) 18:30~20:00
Prof. Dr. Rainer Stadelmann
(Former Director of the German Institute of Archaeology in Cairo)
“The Development of Pyramids from Djoser in Sakkara to Snofru at Dahshur”
2014_konwa_1st<要旨>I will try to follow the development of Pyramid construction from Djoser in Sakkara via the pyramids of Seila and Meidum to the Bent Pyramid and the Red Pyramid in Dahshur. I will attempt to show the development from the construction of Step Pyramids to the successful result at the Red Pyramid, also observing the evolution of the burial Chambers.
<趣旨>このたびの定例懇話会では、昨年12 月の会に引き続き、国際的にも著名なエジプト学研究者にご登壇頂き、サッカラおよびダハシュールの最も著名なピラミッド研究のお話を伺います。
発表には日本語通訳はありませんが、多くのスライドを用い、分かり易くご講演頂けると思います。また講義に先立って、お話の大筋を、日本語で簡略に解説させて頂きます。皆様方の参加を心よりお待ち申し上げます。
第2回 2014年6月26日(木) 18:30~20:00
飯山陽(フジテレビカイロ支局員/上智大学アジア文化研究所客員所員)
「不倫は死刑か懲役刑か?-ファトワー(イスラム法的見解)にみる“イスラム的生き方”の多様性-」
2014_konwa_2nd<要旨>2014 年5月ナイジェリアのイスラム過激派組織ボコハラムは、少女200 人以上を誘拐し、奴隷として売ることが神の命令だと述べた。イスラム教徒のいう神の命令とはイスラム法のことであり、彼らはそれに従うことによって楽園で永遠の命を手にすると信じている。だが個々の事案についてのファトワー(イスラム法的見解)には、驚くほど多様性がある。 本発表では、不倫や墓参り、大統領選挙、脳死と臓器移植といった様々な問題に関するファトワーを事例としつつ、イスラム法やファトワーのメカニズムについてわかりやすく解説したい。
第3回 2014年11月20日(木) 18:30~20:00
星野有希枝(在エジプト日本大使館一等書記官)
「エジプトの文化遺産―持続可能な文化遺産保全の観点から―」
2014_konwa_3rd<要旨>古代遺跡、イスラム建築など、エジプトには人々を魅了してやまない文化遺産が豊富に存在する。一方で、その保存・活用のあり方は、地球的な命題である「持続可能な開発」に沿ったものになっていると言えるだろうか。エジプトに赴任して1年半、この間に感じたこと、考えたことをこの機会にまとめてみたい。
第4回 2015年2月26日(木) 18:30~20:00
市原大和(Tokio Marine Egypt General Takaful S.A.E./ Chief Operating Officer)
2014_konwa_4th「イスラム式保険(タカフル)の概念、仕組み、および将来性、課題」
<要旨>近年、わが国において、2030 年には21 億人に達すると見込まれているムスリム(イスラム教徒)に対するビジネスに、大きな注目が寄せられている。本発表では、イスラム式保険(タカフル)とは何か、その概念、仕組みについて分かりやすく説明するとともに、マーケットの広がり、将来性、課題についてもお話する。
第5回 2015年3月26日(木) 18:30~20:00
長谷川奏(日本学術振興会カイロ研究連絡センター長)
「エジプト文化財保存史の新たな構築をめざして」
2014_konwa_5th<要旨>エジプト文化財保存の問題は、近年では政府省庁、国際機関、研究機関、NGO等さまざまな事業体が複合し、発信される政策は片田舎の遺跡にまで浸透していく。文化財の活用は、1990年代の後半以降、さらに国家の経済戦略と深く結びついていった。本発表では、考古学に携わる者が、エジプトの文化財保存史をどのように編み直すことができるかを再考し、長期政権崩壊期直前の文化行政の特徴を、カイロ(首都圏)とルクソール(地方都市)の事例から位置づけてみる。また2011年以後の4年間の社会的混乱は文化財に甚大な被害をもたらしたが、その中でも最も気がかりな動向をいくつか取り上げて、まとめに代えたい。

2015年度 定例懇話会

第1回 2015年5月21日(木) 18:30~20:00
河合 望 (早稲田大学高等研究所准教授)
「古代エジプトの聖なる丘を掘る―早稲田大学によるアブ・シール南丘陵遺跡の調査―」
2015_konwa_1st<要旨>早稲田大学古代エジプト調査隊は、1991年より科学研究費の助成を賜り、カイロ近郊のアブ・シールの南方に位置する丘陵において発掘調査を継続してきました。これまでの発掘調査によって、この丘陵がエジプト王朝時代の約3000年間に断続的に活動のあった「聖なる丘」であったことが明らかとなりました。これまでに、エジプト最古級の大型石造建造物である石積み遺構、大ピラミッドの建造者クフ王の名前を刻んだライオン像やライオン女神像を納めた岩窟遺構、未盗掘で発見された新王国時代第18王朝初期の集団埋葬、第18王朝のファラオ、アメンヘテプ2世、トトメス4世に関連する日乾煉瓦遺構、そして第19王朝のラメセス2世のカエムワセト王子の葬祭殿とその娘イシスネフェルトの墓などの重要な遺構が発見されています。
講演では、これらの重要な発見のいくつかを紹介しながら、最新のエジプト学の醍醐味や発掘調査のエピソードをわかりやすく解説します。
第2回 2015年6月4日(木) 18:30~20:00
原田怜(JICA長期専門家・金沢大学人間社会研究域付属国際文化資源学研究センター客員研究員)
「文化遺産の国際協力―大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト」
2015_konwa_2nd<要旨>ピラミッドにほど近いエリアで現在新しい博物館が日本の協力により建設されているのをご存知の方は多いと思う。一方、その付属施設で保存修復の技術移転が行われているのはご存知であろうか。現在エジプトでは、日本の円借款事業「大エジプト博物館(Grand Egyptian Museum 通称GEM)」の建設が行われており、またそのGEMに展示・収蔵予定である遺物を取り扱う保存修復センター(GEM-CC)に対しては、2008年よりJICAの技術支援プロジェクトが行われている。そこで、今回の講演では、まず、日本が文化遺産の国際協力を行うことの意義と課題について述べ、その次に、文化遺産が資源となり経済社会発展に寄与するという新しい潮流の中で、大エジプト博物館保存修復センタープロジェクトを位置づけ、今後の文化遺産の国際協力を展望したい。また、モノに焦点が当たりやすい文化遺産保護であるが、モノをまもるために活躍する人々の姿も取り上げる。
第3回 2015年9月3日(木) 18:30~20:00
田中哲也(福岡県立大学教授)
「エジプト近代教育史:現在の教育問題の理解のために」
2015_konwa_3rd<要旨>エジプトで教育について語られるとき、「アズマ(危機)」という言葉が頻繁に使われる。初等教育から大学にまで蔓延している家庭教師等のシャドウ・エデュケーション、それに伴う実質的な教育の有償化、学歴が高くなるほどたかまる失業率等、問題は山積みである。
現在エジプト高等教育研究に手をつけたが、まだまとまった話をできる状況ではない。
そこで今回は現在の教育状況を理解するためにその歴史的背景についてお話しする。ムハンマド・アリー時代による近代的(西洋的)教育制度の導入とその後の展開について、特に現在の教育制度の在り方に直接的な影響を与えた1882年のイギリス占領から1952年革命までの教育制度と諸問題を中心に、現在の状況とも関係づけながらお話しする。
第4回 2015年10月8日(木) 18:30~20:00
西坂朗子(東日本国際大学エジプト考古学研究所客員准教授、早稲田大学エジプト学研究所招聘研究員)
「古代エジプトの壁画の保存修復―過去から未来へ何をどう残すか―」
2015_konwa_4th<要旨>古代エジプトの壁画に限らず、文化遺産の保存修復における直接的な介入処置は、一歩間違えれば、意図せぬ破壊に繋がることがある。また介入処置に関する方針決定の指針となるべき保存修復の理念や倫理、これを扱う憲章、ガイドライン等も、時代の潮流と共に見直されてきた。価値観が多様化するなかで、保存修復に関わる専門家は何を拠り所に方針決定をすればよいのか? 過去から未来へ何をどう残すのか?
本講演では、大英博物館等のイギリスの博物館における壁画片の保存修復の事例、および、ルクソールの王家の谷におけるアメンヘテプ3世王墓壁画保存修復プロジェクトの事例などを交えて考えたい。
2015年12月19日(土) 16:00~17:15
越智光夫(広島大学長)
「関節軟骨再生と広島大学」
2015_konwa_ex今回ご発表の越智光夫先生は、広島大学の第12代の学長であると同時に整形外科、再生医療をご専門とされる世界でも屈指の整形外科医でもあります。
先生のご専門については以下の記事をご参照ください:

  1. 「インタビュー『この人に聞く』:越智光夫氏「絶え間ないアイディア模索で最良治療を考案」」(iPS Trend)
    http://www.jst.go.jp/ips-trend/column/interview/19/no01.html
  2. 福山 健「【ヒューマンドキュメント・医療機器を開発した人たち】第21回 ”ひざ痛治療革命”といわれる「自家培養軟骨」開発物語」(日経デジタルヘルス)
    http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140924/378452/?ST=ndh
第5回 2016年1月28日(木) 18:30~20:00
Ahmed Fathy(カイロ大学日本語学科教授)
「日本中世の語りと義経伝説」
2015_konwa_5th<要旨>日本中世の軍記物語を代表するのは“平家物語“である。平家一族の頭領である平清盛をはじめとする平家の盛衰の物語が中心的なテーマである。その中に源義経のエピソードが含まれている。一方,“義経記“の中心的テーマが源義経の一生とその悲劇的な最期でありながら,平家のいくつかのエピソードが含まれている。つまり両物語はお互い“裏返しの関係“にあるのではないかと思われる。中世の語り物文芸はどのような状況で行われたのか。そして21世紀になってあらためて義経伝説を読み直す必要があるのでしょうか。
第6回 2016年2月18日(木) 18:30~20:00
柏木裕之(早稲田大学エジプト学研究所 研究員)
「ピラミッドの楽しみ方-研究者はどこを見ているのか」
2016_konwa_6th<要旨>「おぬしの目は節穴か?」私の先生がニヤリとしながら放つ決め台詞でした。偉い先生であっても出来の悪い学生であっても、見えるピラミッドは同じはず。でも古代の労働者が残した小さな傷跡を鋭く見つけ、それらを針の穴に糸を通すように繋いで、一本の物語を描く姿は圧巻でした。
発表者は吉村作治率いる調査隊で建造物を担当し、様々な現場に携わってきました。建築史の研究者はピラミッドのどこを見て、何を考えているのか。「プロの目」を示しながら、石を積み重ねただけの塊に潜む仕組みや工夫、技術に迫りたいと思います。一度は見たことがあるピラミッドでしょうが、ご自身の目が節穴だったかどうか、ご確認あそばせ。
2016年3月10日(木) 17:30開場 18:00発表 20:00懇親会 21:00閉会
場所:日本学術振興会カイロ研究連絡センター多目的集会室
発表:「歴史と環境から見えるエジプト像」
今回は、2015年度末にあたり、特別に日本でご活躍中の3名の先生方にお話を伺いすることになりました。講演とその後の質疑応答を通して、長大な歴史と自然環境からエジプト像をとらえてみたいと思います。どうぞご参加くださいますよう、お願いいたします。

1.「カイロの歴史とマムルーク朝」(講演者:吉村武典(早稲田大学))
バビロンそしてフスタートへとつらなるナイル川の賜物としての都市建設以後、アル・カーヒラの創設を経験し、マムルーク朝経といたった道筋、およびマムルーク朝当時の最盛期のカイロを紹介します。特に、マムルーク朝の治水および水施設に着目し、カイロと水との関係をお話しします。なお、早稲田大学において公開中のエジプトの歴史遺産等のデータベースについても紹介いたします。
2. 「千年村プロジェクトとエジプト」(講演者:中谷 礼仁(早稲田大学))
千年村プロジェクトとは、千年以上良好な環境や生産、居住を確保してきた地域を千年村と称し、それらを発見し、訪問し、交流し、未来の地域のあり方を検討している活動です。日本国内を主な活動としている同プロジェクトによって、日本国内における人間の住む環境の望むべきあり方も次第に分かってきてきました。今回はそれら国内での活動を紹介しつつ、日本の千年村よりもさらに長く存在していると思われるエジプトの伝統的地域の立地条件についてさらに考察をしてみたいと思います。
3.「エジプトのトゥールーン朝と東地中海世界」(講演者:太田敬子(北海道大学))
カイロに現存する最古のモスクといわれるイブン・トゥールーン・モスクを建設したアフマド・ブン・トゥールーンは、アッバース朝の奴隷軍人(マムルーク)を父に持つ二世軍人で、イラクの出身でした。総督代理としてエジプトに派遣され、そこで実権を握り、事実上の独立王朝トゥールーン朝を樹立します。アッバース朝カリフの権威は認めつつもイスラーム以降エジプトで初めて成立した独立政権です。さらに彼はシリアに進出して地中海東岸部に覇権拡大を図りますが、それがエジプトのムスリム王朝の慣例ともなり、イフシード朝、ファーティマ朝、アイユーブ朝、マムルーク朝も同じ轍を踏むことになります。彼はその後のエジプト史の軌道を作った人物といっても良いでしょう。しかしながら、彼のシリア進出の動機には興味深い個人的な側面がみられることも彼の伝記作家バラウィーは伝えています。本懇話会では9−10世紀の東地中海情勢を踏まえつつ、アフマド・ブン・トゥールーンの人物像にも触れながら、エジプトの独立王朝トゥールーン朝の歴史を繙いていきます。
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2016年3月24日(木) 18:30~20:00
「カイロにおけるインドネシア人アズハル大学留学生コミュニティの今日的諸相」
木下博子(九州大学E-JUST連携センター 学術研究員)
2016_konwa_ex3<要旨>アズハルは、その成立以降、イスラーム諸学を修めることを志すムスリムを世界中から受け入れてきた。インドネシアにおいても、19世紀中盤以降多くのムスリムがアズハルを目指した。20世紀に入るとその数は年々増加し、現在では4,000名を超えるインドネシア人留学生がアズハルに学んでいる。 本報告では、発表者が実施している現地調査をもとに、インドネシア人アズハル大学留学生のコミュニティについて解説します。
また、発表者の所属する九州大学E-JUST連携センターの活動も紹介します。