日本学術振興会カイロ研究連絡センター第15回定例懇話会(Zoom)のお知らせ
前略、カイロでは寒さも少しずつ和らぎ始めたかのように感じるこの頃です。この度は、中世アラブの医療とその伝播について尾崎先生にお話いただけることとなりました。ちなみにカイロのイスラーム美術館にも、数多くの医薬道具が展示されております。尾崎先生は、中世アラブを中心として、医薬に限らず食文化にもご造詣が深く、多数の論文を執筆していらっしゃいます。ぜひ、多くのみなさまにご参加いただきたく、ご案内いたします。オンラインの開催となりますので、お手続きのほど、よろしくお願いいたします。
◆ 日時:2022年2月18日(金曜) 開始時間:日本時間20時より (カイロ13時より) 60分
質疑応答:30分
◆ 配信方法:Zoom
◆ 講演:「中世イスラム医学の外科治療としての焼灼とその東伝:10世紀医学書、11世紀アンダルス裁判事例集、12世紀『ホラズムシャーの宝庫』、そして『回回薬方』の記述から」
◆ 講師:尾崎貴久子 (防衛大学校総合教育学群外国語教育室・教授)
◆ 要旨(講師記)
イスラム医学の外科治療の1つに焼灼がある。焼灼治療は、ハディースにおいては預言者ムハンマドが治療方法として挙げた3つの治療の1つであると記録されている。このことから、イスラム成立以前から人々に身近な治療であったといえる。
イスラム医学の焼灼治療の体系化は、10世紀、それぞれバグダードとコルドバで活躍した宮廷医師2人によってなされた。14世紀末には、このイスラム医学の焼灼法は、漢語イスラム医学書に「灸」として記載された。今回の発表では、まずイスラム医学の外科術や焼灼治療を、医学者や市井の人々はどのように認識、利用していたかを、10世紀の医学書および11世紀アンダルスの裁判事例集における医療裁判記録、そして14世紀に体系化された預言者の医学の書から検討する。
次に、焼灼法は東西イスラム世界の各地に伝播するが、その東への経路を考察する。最古のペルシャ語医学書とされる12世紀の『ホラズムシャーの宝庫』そして14世紀末の漢語医学書の『回回薬方』の記述を取り上げ、検討をおこなう。アラビア語・ペルシャ語・漢語の記述の比較検討からは、文字情報によるイスラム医学の東伝の時期と経路、その特徴が、さらには中国でのイスラム医学の治療者たちの活動の一端が浮かび上がる。
●参加方法:講演は無料となっております。参加者は、講演タイトル、氏名(フルネーム)と所属を明記の上、メール(jspslecmet@gmail.com)にて、前日までに必ずお申込みください。
ZoomのURL、ID、パスワードをこちらより後日連絡いたします。
※今回の講演は金曜に開催いたしますので、曜日をお間違えの無いようにご注意ください。