過去の定例懇話会

2013年度 定例懇話会

第1回 2013年6月6日(木) 18:30~20:00
福永浩一(上智大学大学院博士課程、ヘルワン大学文学部歴史学科)
「初期ムスリム同胞団の思想と活動―創設者ハサン・バンナーの著作を通じて―」
<要旨>現在エジプトはムスリム同胞団系のムルシーが政権の座につきおよそ1年となる。同胞団はナセル政権下で弾圧されてより非合法化されていたことで知られるが、この組織は1928年にハサン・バンナーと6名の同志により結成されたのを起源とする長い歴史を持ち、当時イスラーム復興の先駆的な運動であった。本報告は非合法化以前の同胞団に注目し、初代指導者バンナーの回想録や論考その他を参照しつつ、彼が多数の民衆を動員する包括的な組織の形成を着想するに至る経緯と、その後いかに同胞団の理念を発展させたかについて考察を試みる。

 

第2回 2013年12月19日(木) 18:30~20:00
Dr. Hourig Sourouzian
(Director of ‘The Colossi of Memnon and Amenhotep III Temple Conservation Project’)
“Recent work at the ‘Temple of Millions of Years’ of king Amenhotep III”
<要旨> The ‘Temple of Millions of Years’ of king Amenhotep III on the west bank of the Nile in Luxor was the largest of all funerary temples in Egypt . ≪ The Colossi of Memnon and Amenhotep III Temple Conservation Project ≫ has been active on the site since 1998, with the aim to save the last remains of this once prestigious temple, which had collapsed during a heavy earthquake in antiquity. This extremely damaged and abandoned site, was actually threatened by neglect and encroachments, and its monuments were endangered by irrigation water, salt, vegetation, fires and vandalism. The efforts to save this site have been successfully carried out thank to the generosity of private donors and the know how of qualified specialists, with defoliation, desalination, full documentation and conservation of the visible remains. Simultaneously new discoveries have brought to light royal colossal statues of extremely high artistic quality, found broken into thousands of fragments and scattered all over the site, along with a monumental stela and remnants of architecture. The story of the discovery of these monuments, the process of reassembling their dispersed parts, and their final presentation at their original place in the temple, will be the subject of this presentation.
<趣旨>このたびの定例懇話会では、国際的にも著名なエジプト学研究者にご登壇頂き、ルクソール西岸地域で進める新王国時代の調査研究のお話を伺います。発表には日本語通訳はありませんが、多くのスライドを用い、分かり易くご講演頂けると思います。また講義に先立って、お話の大筋を、日本語で簡略に解説させて頂きます。皆様方の参加を心よりお待ち申し上げます。

 

第3回 2014年1月30日(木) 18:30~20:00
澤井真(東北大学大学院博士課程)
「イスラームにおける神の名前―タンヌーラからイスラーム哲学まで」
イスラームには、「神は99の名前をもつ」というハディース(預言者ムハンマドの言行録)がある。神の名前は、カイロの街角やムスリムの日常生活の到る所に登場する。イスラーム思想もまた、神の名前を通して展開されてきたが、それは神の名前を知ることは人間を知ることと直結するからである。本発表では、エジプト観光の一つであるタンヌーラ(スーフィーの旋舞ショー)や預言者生誕祭など、聴衆にも馴染みのある事例を糸口としながら、イスラーム哲学の神名論へと考察を進めていくことにしたい。

 

第4回 2014年3月20日(木) 18:30~20:00
特別企画「トルコ~エジプト~日本をつなぐ近代社会のネットワーク」
18:20~19:00 発表①
「日本出身タタール移民のライフヒストリー ―トルコ・アメリカへの移住を中心に-」
沼田彩誉子(ボアジチ大学アジア学研究所客員研究員)
1917年のロシア革命後、ヴォルガ川中流域に住むタタール人は満州、朝鮮半島、日本へと避難した。1920~50年代を極東で過ごした彼らタタール移民は、戦中日本のイスラーム政策の対象とされた。このことから、イスラーム政策とタタール移民の指導者の活動が研究課題とされてきた。これに対し、戦後、極東を離れたタタール移民に関して彼らの「その後」が取り上げられることは少なかった。本発表では聞き取り調査に基づき、日本の敗戦による政策終結以降に焦点をあて、日本からトルコ・アメリカへと移住した人々のライフヒストリーを明らかにする。
19:00~19:10 質疑応答
19:10~19:50 発表②
「スフィンクスと奈良の大仏-明治日本の建築家、伊東忠太の埃及(エジプト)旅行-」
青木美由紀(イスタンブル工科大学准教授補)
東京築地本願寺の建築家として知られる伊東忠太(1867-1854)。「建築」の訳語を日本語に定着させ、日本初の建築史家でもあった忠太は、1902年、法隆寺の建築が、ギリシアにつながるという持論を証明するため、世界一周の旅に出た。三年三ヶ月の世界旅行中、約1ヶ月半滞在したエジプトで、暑さに溶ける写真現像液もなんのその、忠太はスフィンクスと奈良の大仏の大きさ比べをする。本講演では、 伊東忠太の抱腹絶倒のエジプト旅行のエピソードを追いながら、 明治知識人としての忠太の「エジプト観」を焙り出し、エジプトが、日本の「東洋建築」という大きな枠組みにどう位置づけられたかを紹介する。
19:50~20:00 質疑応答

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2014年度 定例懇話会

第1回 2014年5月29日(木) 18:30~20:00
Prof. Dr. Rainer Stadelmann
(Former Director of the German Institute of Archaeology in Cairo)
“The Development of Pyramids from Djoser in Sakkara to Snofru at Dahshur”
<要旨>I will try to follow the development of Pyramid construction from Djoser in Sakkara via the pyramids of Seila and Meidum to the Bent Pyramid and the Red Pyramid in Dahshur. I will attempt to show the development from the construction of Step Pyramids to the successful result at the Red Pyramid, also observing the evolution of the burial Chambers.
<趣旨>このたびの定例懇話会では、昨年12 月の会に引き続き、国際的にも著名なエジプト学研究者にご登壇頂き、サッカラおよびダハシュールの最も著名なピラミッド研究のお話を伺います。
発表には日本語通訳はありませんが、多くのスライドを用い、分かり易くご講演頂けると思います。また講義に先立って、お話の大筋を、日本語で簡略に解説させて頂きます。皆様方の参加を心よりお待ち申し上げます。

 

第2回 2014年6月26日(木) 18:30~20:00
飯山陽(フジテレビカイロ支局員/上智大学アジア文化研究所客員所員)
「不倫は死刑か懲役刑か?-ファトワー(イスラム法的見解)にみる“イスラム的生き方”の多様性-」
<要旨>2014 年5月ナイジェリアのイスラム過激派組織ボコハラムは、少女200 人以上を誘拐し、奴隷として売ることが神の命令だと述べた。イスラム教徒のいう神の命令とはイスラム法のことであり、彼らはそれに従うことによって楽園で永遠の命を手にすると信じている。だが個々の事案についてのファトワー(イスラム法的見解)には、驚くほど多様性がある。 本発表では、不倫や墓参り、大統領選挙、脳死と臓器移植といった様々な問題に関するファトワーを事例としつつ、イスラム法やファトワーのメカニズムについてわかりやすく解説したい。

 

第3回 2014年11月20日(木) 18:30~20:00
星野有希枝(在エジプト日本大使館一等書記官)
「エジプトの文化遺産―持続可能な文化遺産保全の観点から―」
<要旨>古代遺跡、イスラム建築など、エジプトには人々を魅了してやまない文化遺産が豊富に存在する。一方で、その保存・活用のあり方は、地球的な命題である「持続可能な開発」に沿ったものになっていると言えるだろうか。エジプトに赴任して1年半、この間に感じたこと、考えたことをこの機会にまとめてみたい。

 

第4回 2015年2月26日(木) 18:30~20:00
市原大和(Tokio Marine Egypt General Takaful S.A.E./ Chief Operating Officer)
「イスラム式保険(タカフル)の概念、仕組み、および将来性、課題」
<要旨>近年、わが国において、2030 年には21 億人に達すると見込まれているムスリム(イスラム教徒)に対するビジネスに、大きな注目が寄せられている。本発表では、イスラム式保険(タカフル)とは何か、その概念、仕組みについて分かりやすく説明するとともに、マーケットの広がり、将来性、課題についてもお話する。

 

第5回 2015年3月26日(木) 18:30~20:00
長谷川奏(日本学術振興会カイロ研究連絡センター長)
「エジプト文化財保存史の新たな構築をめざして」
<要旨>エジプト文化財保存の問題は、近年では政府省庁、国際機関、研究機関、NGO等さまざまな事業体が複合し、発信される政策は片田舎の遺跡にまで浸透していく。文化財の活用は、1990年代の後半以降、さらに国家の経済戦略と深く結びついていった。本発表では、考古学に携わる者が、エジプトの文化財保存史をどのように編み直すことができるかを再考し、長期政権崩壊期直前の文化行政の特徴を、カイロ(首都圏)とルクソール(地方都市)の事例から位置づけてみる。また2011年以後の4年間の社会的混乱は文化財に甚大な被害をもたらしたが、その中でも最も気がかりな動向をいくつか取り上げて、まとめに代えたい。

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