過去の定例懇話会

2015年度 定例懇話会

第1回 2015年5月21日(木) 18:30~20:00
河合 望 (早稲田大学高等研究所准教授)
「古代エジプトの聖なる丘を掘る―早稲田大学によるアブ・シール南丘陵遺跡の調査―」
<要旨>早稲田大学古代エジプト調査隊は、1991年より科学研究費の助成を賜り、カイロ近郊のアブ・シールの南方に位置する丘陵において発掘調査を継続してきました。これまでの発掘調査によって、この丘陵がエジプト王朝時代の約3000年間に断続的に活動のあった「聖なる丘」であったことが明らかとなりました。これまでに、エジプト最古級の大型石造建造物である石積み遺構、大ピラミッドの建造者クフ王の名前を刻んだライオン像やライオン女神像を納めた岩窟遺構、未盗掘で発見された新王国時代第18王朝初期の集団埋葬、第18王朝のファラオ、アメンヘテプ2世、トトメス4世に関連する日乾煉瓦遺構、そして第19王朝のラメセス2世のカエムワセト王子の葬祭殿とその娘イシスネフェルトの墓などの重要な遺構が発見されています。
講演では、これらの重要な発見のいくつかを紹介しながら、最新のエジプト学の醍醐味や発掘調査のエピソードをわかりやすく解説します。

 

第2回 2015年6月4日(木) 18:30~20:00
原田怜(JICA長期専門家・金沢大学人間社会研究域付属国際文化資源学研究センター客員研究員)
「文化遺産の国際協力―大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト」
<要旨>ピラミッドにほど近いエリアで現在新しい博物館が日本の協力により建設されているのをご存知の方は多いと思う。一方、その付属施設で保存修復の技術移転が行われているのはご存知であろうか。現在エジプトでは、日本の円借款事業「大エジプト博物館(Grand Egyptian Museum 通称GEM)」の建設が行われており、またそのGEMに展示・収蔵予定である遺物を取り扱う保存修復センター(GEM-CC)に対しては、2008年よりJICAの技術支援プロジェクトが行われている。そこで、今回の講演では、まず、日本が文化遺産の国際協力を行うことの意義と課題について述べ、その次に、文化遺産が資源となり経済社会発展に寄与するという新しい潮流の中で、大エジプト博物館保存修復センタープロジェクトを位置づけ、今後の文化遺産の国際協力を展望したい。また、モノに焦点が当たりやすい文化遺産保護であるが、モノをまもるために活躍する人々の姿も取り上げる。

 

第3回 2015年9月3日(木) 18:30~20:00
田中哲也(福岡県立大学教授)
「エジプト近代教育史:現在の教育問題の理解のために」
<要旨>エジプトで教育について語られるとき、「アズマ(危機)」という言葉が頻繁に使われる。初等教育から大学にまで蔓延している家庭教師等のシャドウ・エデュケーション、それに伴う実質的な教育の有償化、学歴が高くなるほどたかまる失業率等、問題は山積みである。
現在エジプト高等教育研究に手をつけたが、まだまとまった話をできる状況ではない。
そこで今回は現在の教育状況を理解するためにその歴史的背景についてお話しする。ムハンマド・アリー時代による近代的(西洋的)教育制度の導入とその後の展開について、特に現在の教育制度の在り方に直接的な影響を与えた1882年のイギリス占領から1952年革命までの教育制度と諸問題を中心に、現在の状況とも関係づけながらお話しする。

 

第4回 2015年10月8日(木) 18:30~20:00
西坂朗子(東日本国際大学エジプト考古学研究所客員准教授、早稲田大学エジプト学研究所招聘研究員)
「古代エジプトの壁画の保存修復―過去から未来へ何をどう残すか―」
<要旨>古代エジプトの壁画に限らず、文化遺産の保存修復における直接的な介入処置は、一歩間違えれば、意図せぬ破壊に繋がることがある。また介入処置に関する方針決定の指針となるべき保存修復の理念や倫理、これを扱う憲章、ガイドライン等も、時代の潮流と共に見直されてきた。価値観が多様化するなかで、保存修復に関わる専門家は何を拠り所に方針決定をすればよいのか? 過去から未来へ何をどう残すのか?
本講演では、大英博物館等のイギリスの博物館における壁画片の保存修復の事例、および、ルクソールの王家の谷におけるアメンヘテプ3世王墓壁画保存修復プロジェクトの事例などを交えて考えたい。

 

2015年12月19日(土) 16:00~17:15
越智光夫(広島大学長)
「関節軟骨再生と広島大学」
今回ご発表の越智光夫先生は、広島大学の第12代の学長であると同時に整形外科、再生医療をご専門とされる世界でも屈指の整形外科医でもあります。
先生のご専門については以下の記事をご参照ください:
「インタビュー『この人に聞く』:越智光夫氏「絶え間ないアイディア模索で最良治療を考案」」(iPS Trend)
http://www.jst.go.jp/ips-trend/column/interview/19/no01.html
福山 健「【ヒューマンドキュメント・医療機器を開発した人たち】第21回 ”ひざ痛治療革命”といわれる「自家培養軟骨」開発物語」(日経デジタルヘルス)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140924/378452/?ST=ndh

 

第5回 2016年1月28日(木) 18:30~20:00
Ahmed Fathy(カイロ大学日本語学科教授)
「日本中世の語りと義経伝説」
<要旨>日本中世の軍記物語を代表するのは“平家物語“である。平家一族の頭領である平清盛をはじめとする平家の盛衰の物語が中心的なテーマである。その中に源義経のエピソードが含まれている。一方,“義経記“の中心的テーマが源義経の一生とその悲劇的な最期でありながら,平家のいくつかのエピソードが含まれている。つまり両物語はお互い“裏返しの関係“にあるのではないかと思われる。中世の語り物文芸はどのような状況で行われたのか。そして21世紀になってあらためて義経伝説を読み直す必要があるのでしょうか。

 

第6回 2016年2月18日(木) 18:30~20:00
柏木裕之(早稲田大学エジプト学研究所 研究員)
「ピラミッドの楽しみ方-研究者はどこを見ているのか」
<要旨>「おぬしの目は節穴か?」私の先生がニヤリとしながら放つ決め台詞でした。偉い先生であっても出来の悪い学生であっても、見えるピラミッドは同じはず。でも古代の労働者が残した小さな傷跡を鋭く見つけ、それらを針の穴に糸を通すように繋いで、一本の物語を描く姿は圧巻でした。
発表者は吉村作治率いる調査隊で建造物を担当し、様々な現場に携わってきました。建築史の研究者はピラミッドのどこを見て、何を考えているのか。「プロの目」を示しながら、石を積み重ねただけの塊に潜む仕組みや工夫、技術に迫りたいと思います。一度は見たことがあるピラミッドでしょうが、ご自身の目が節穴だったかどうか、ご確認あそばせ。

 

2016年3月10日(木) 17:30開場 18:00発表 20:00懇親会 21:00閉会
場所:日本学術振興会カイロ研究連絡センター多目的集会室
発表:「歴史と環境から見えるエジプト像」
今回は、2015年度末にあたり、特別に日本でご活躍中の3名の先生方にお話を伺いすることになりました。講演とその後の質疑応答を通して、長大な歴史と自然環境からエジプト像をとらえてみたいと思います。どうぞご参加くださいますよう、お願いいたします。

1.「カイロの歴史とマムルーク朝」(講演者:吉村武典(早稲田大学))
バビロンそしてフスタートへとつらなるナイル川の賜物としての都市建設以後、アル・カーヒラの創設を経験し、マムルーク朝経といたった道筋、およびマムルーク朝当時の最盛期のカイロを紹介します。特に、マムルーク朝の治水および水施設に着目し、カイロと水との関係をお話しします。なお、早稲田大学において公開中のエジプトの歴史遺産等のデータベースについても紹介いたします。
2. 「千年村プロジェクトとエジプト」(講演者:中谷 礼仁(早稲田大学))
千年村プロジェクトとは、千年以上良好な環境や生産、居住を確保してきた地域を千年村と称し、それらを発見し、訪問し、交流し、未来の地域のあり方を検討している活動です。日本国内を主な活動としている同プロジェクトによって、日本国内における人間の住む環境の望むべきあり方も次第に分かってきてきました。今回はそれら国内での活動を紹介しつつ、日本の千年村よりもさらに長く存在していると思われるエジプトの伝統的地域の立地条件についてさらに考察をしてみたいと思います。
3.「エジプトのトゥールーン朝と東地中海世界」(講演者:太田敬子(北海道大学))
カイロに現存する最古のモスクといわれるイブン・トゥールーン・モスクを建設したアフマド・ブン・トゥールーンは、アッバース朝の奴隷軍人(マムルーク)を父に持つ二世軍人で、イラクの出身でした。総督代理としてエジプトに派遣され、そこで実権を握り、事実上の独立王朝トゥールーン朝を樹立します。アッバース朝カリフの権威は認めつつもイスラーム以降エジプトで初めて成立した独立政権です。さらに彼はシリアに進出して地中海東岸部に覇権拡大を図りますが、それがエジプトのムスリム王朝の慣例ともなり、イフシード朝、ファーティマ朝、アイユーブ朝、マムルーク朝も同じ轍を踏むことになります。彼はその後のエジプト史の軌道を作った人物といっても良いでしょう。しかしながら、彼のシリア進出の動機には興味深い個人的な側面がみられることも彼の伝記作家バラウィーは伝えています。本懇話会では9−10世紀の東地中海情勢を踏まえつつ、アフマド・ブン・トゥールーンの人物像にも触れながら、エジプトの独立王朝トゥールーン朝の歴史を繙いていきます。
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2016年3月24日(木) 18:30~20:00
「カイロにおけるインドネシア人アズハル大学留学生コミュニティの今日的諸相」
木下博子(九州大学E-JUST連携センター 学術研究員)
<要旨>アズハルは、その成立以降、イスラーム諸学を修めることを志すムスリムを世界中から受け入れてきた。インドネシアにおいても、19世紀中盤以降多くのムスリムがアズハルを目指した。20世紀に入るとその数は年々増加し、現在では4,000名を超えるインドネシア人留学生がアズハルに学んでいる。 本報告では、発表者が実施している現地調査をもとに、インドネシア人アズハル大学留学生のコミュニティについて解説します。
また、発表者の所属する九州大学E-JUST連携センターの活動も紹介します。

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